現物確認調査とは?税務調査で何を確認されるのか、具体例と注意点を解説
税務調査について調べていると、「現物確認調査」という言葉を目にすることがあります。
税務署が実際の事業所や商品、設備などを確認するイメージがありますが、税務調査ではどこまで確認されるのかと疑問に感じる方も多いでしょう。
特に個人事業主や中小企業の場合、「どこまで見られるのか」「断ることはできるのか」「何を準備しておけばよいのか」は気になるところです。
現物確認調査は、税務調査において申告内容や帳簿書類の記載内容と、実際の事業の状況が一致しているかを確認するために行われる重要な調査です。
現物確認調査とは、実際の物や事業現場を確認する調査
「現物確認調査」という名称の独立した法定調査が定められているわけではありません。国税通則法上の質問検査権に基づく実地の調査などの中で、必要に応じて現物を確認することがあります。
例えば、商品を販売している会社であれば、帳簿に記載された商品と実際の在庫が一致しているか、製造業であれば機械設備などの事業用資産が実際に存在しているか、個人事業主であれば事業所内に保管されている取引関係書類などを確認することがあります。
国税庁は、税務調査における質問検査等の対象について、法令上保存が義務付けられている帳簿書類だけでなく、調査に必要と認められる「帳簿書類その他の物件」も含まれるとしています。
なぜ現物確認をするのか?帳簿だけでは分からない事実を確認するため
税務調査では、単に帳簿の数字を確認するだけではなく、その数字がどのような取引や事実に基づいているのかを確認します。そのため、必要に応じて事業所の状況、商品、設備、書類、預貯金などを確認することがあります。
例えば、売上について確認する場合、売上帳だけを確認するのではなく、受注書、納品書、請求書、入金記録などを把握し、相互に照合することで、売上計上漏れがないかを確認します。
また、国税庁が公表した税務調査事例では、無申告者に対する調査で、本人のパソコンや作業机周辺について現物確認調査を行い、売上先から交付された多数の支払調書を把握し、期限後申告提出となった事例があります。
このように、現物確認は単に「物を見て終わり」というものではなく、帳簿、申告書、取引資料などと現場で把握した資料や事実関係とを照合するために行われます。
現物確認調査の具体例|商品・設備・書類・パソコンなど
商品や棚卸資産を確認するケース
小売業や卸売業などでは、実際に保管されている商品を確認し、帳簿上の在庫との関係を調べることがあります。
例えば、決算日に100万円の商品在庫があると帳簿に記載されているにもかかわらず、実際の商品や関連資料を確認すると大きく異なる場合には、棚卸計上の適否を検討する必要があります。
固定資産や事業用設備を確認するケース
製造業や建設業などでは、機械、車両、工具、設備などの実物を確認することがあります。
帳簿に計上されている固定資産が実際に存在するのか、事業に使用されているのか、取得時期や使用状況はどうなっているのかなどを確認することがあります。
事業所内の書類などを確認するケース
事業所内に保管されている契約書、請求書、領収書、支払関係資料などが確認対象となることもあります。
国税庁は、質問検査権の対象となる「帳簿書類その他の物件」について、法令上保存が必要な帳簿書類だけではなく、税務調査に必要と認められるものも含まれるとしています。
パソコンや電子データを確認するケース
近年は、事業に関する情報がパソコンやクラウドサービスなどに保存されているケースも増えています。
国税庁のFAQでは、電磁的記録について、提示を求められた場合には、その内容をディスプレイ上で調査担当者が確認できる状態にして示す方法などが示されています。また、必要に応じて電子データの提出を求められる場合もあります。
「現物を見せたくない」「パソコンを見せる必要はない」は通用する?
国税通則法上、税務調査について必要がある場合には、調査担当者が帳簿書類その他の物件について提示・提出を求め、検査することが認められています。国税庁も、法人税の調査において法人代表者名義の個人預金であっても、事業との関連性が疑われる場合には、その通帳の提示・提出を求めることが法令上認められる場合があると説明しています。
一方で、税務調査は無制限に何でも確認できるというものではありません。
質問検査等は、税務調査について必要がある場合に行われるものです。
また、国税庁の事務運営指針では、実地調査を行う際には身分証明書等を提示して調査のために訪問したことを明らかにし、理解と協力を得て質問検査等を行うこと、帳簿書類その他の物件の提示・提出を求める場合にも、納税者の理解と協力の下で行うこととされています。
したがって、「現物確認だから何でも自由に見られる」と考えるのも、「絶対に見せなくてよい」と考えるのも適切ではありません。調査の目的や事業との関連性を踏まえて対応することが重要です。
現物確認調査への備えは「帳簿と実態を一致させる」ことが重要
特に、次のような事項は日頃から確認しておくと安心です。
- ・商品や原材料の実在庫と帳簿残高が大きく乖離していないか
- ・帳簿に計上している固定資産が実際に存在しているか
- ・事業用と個人用の資産を適切に区分しているか
- ・売上に関する契約書、請求書、納品書などが整理されているか
- ・パソコンやクラウド上の取引データを適切に保存しているか
- ・事業所内に保管している資料と会計処理の内容が一致しているか
国税庁の令和8年7月改訂FAQでも、正当な理由なく帳簿書類等の提示・提出を拒んだ場合などには、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることがあるとされています。
まとめ
現物確認調査という独立した法定調査が存在するというより、税務調査における質問検査等の一環として、必要に応じて現物を確認するものと理解すると分かりやすいでしょう。
個人事業主や中小企業にとって重要なのは、税務調査を意識して特別な資料を作ることではありません。日頃から帳簿と実際の取引、在庫、固定資産、事業実態を一致させ、必要な資料を整理しておくことです。そうしておけば、現物確認を求められた場合でも、落ち着いて対応しやすくなります。
FAQ(よくある質問)
税務調査において、帳簿や申告書だけでは確認できない事実について、実際の商品、設備、書類、事業所の状況などを確認することです。
「現物確認調査」という独立した法定調査があるというより、質問検査等の一環として行われるものと考えるとよいでしょう。
Q2.現物確認調査では何を見られますか?
事業内容によって異なりますが、商品、棚卸資産、機械設備、車両、事業所内の書類、パソコンに保存された事業関係データなどが確認対象となる場合があります。
Q3.現物確認調査を拒否できますか?
税務調査について必要がある場合、帳簿書類その他の物件の提示・提出や検査が行われることがあります。
正当な理由なく提示・提出を拒否することは避ける必要があります。
Q4.自宅で事業をしている場合、自宅も確認されますか?
自宅で事業を行っている場合には、事業に関連する場所や物件について確認が行われる可能性があります。
ただし、税務調査に必要な範囲で行われるものであり、無制限に私生活を確認するというものではありません。
Q5.現物確認調査に備えて何をすればよいですか?
商品、固定資産、帳簿、請求書、領収書などについて、実際の状況と会計処理が一致しているかを日頃から確認しておくことが重要です。電子データについても、必要な取引資料を確認できる状態にしておくと、調査に対応しやすくなります。
2026年09月03日 16:38
